30代のキャリアブレイク|10年の工場勤務を辞め、沖縄リゾートバイトと地球一周を経て、栃木「ペニーレイン」の正社員になるまで

従来の「若者の思い出作り」や「一時的なつなぎ」というリゾートバイトのイメージは、今や変わりつつある。人生の転換期に一度立ち止まり、自らの生き方やキャリアを再構築するための「キャリアブレイク」として活用する大人が増えているのだ。
栃木県にある高名なベーカリー・レストラン「ペニーレイン」で、2026年1月から直接雇用(正社員)として新たなスタートを切った國井さん(36歳)も、その一人である。彼は長年続けた医療機器製造の正社員を退職して、東京ディズニーランドのキャスト、そしてリゾートバイトを通じたキャリアブレイクへ。一見すると遠回りに思えるこれまでの道のりだが、それは自らの可能性を広げ、納得のいく未来を掴み取るための一歩であった。
「ずっと工場で働くものだ」と思っていた10年目からの決断
國井さんは最初のキャリアとして、医療機器製造(内視鏡の修理・製造)の仕事に10年間正社員として従事していた。工場の仕事自体も好きで、そこでできた友人とは今でも10年来の付き合いが続いている。しかし、同僚たちが次々と自らのやりたいことを見つけて退職していく姿を見るうちに、心境に変化が訪れる。
明確な転機は、20歳のときに訪れた東京ディズニーランドでキャストの接客に衝撃を受けたことだ。「ここで働きたい」という思いから30代を目前に退職し、2年間にわたりキャストとして勤務した。
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「10年勤めた工場を辞めるのは大きな決断でしたが、仕事が嫌だったわけではありません。兄弟も工場勤務だったため、自分もそうやって生きるものだと思っていました。ただ、本当に辞めてよかったのは、入社直後にコロナ禍になったことです。コロナ禍の間は実際に新しいアルバイトの受け入れが止まっていたので、少しでも退職を迷っていたら、キャストとして働く夢は叶いませんでした」
キャストとしての任期を終えた國井さんには、もう一つの大きな夢があった。それは「地球一周の船旅」への参加である。3ヶ月もの長旅に出るための資金を貯めるタイミングで出会ったのが、リゾートバイトであった。
「リゾートバイトであれば、生活費をかけずに住み込みで働けるため、効率よく旅の資金を貯められると考えたのがきっかけです。上京時には両親ともしっかり話し合っていたので、『好きにしなさい』と見守ってくれていました。環境を変える不安はありましたが、工場での10年間で培った対人スキルがあったので、『どこでも上手くやっていける!』という謎の自信がありましたね(笑)」
リゾートバイトで資金を貯め、「地球一周の船旅」へ
國井さんは最初のリゾートバイトの地として、沖縄県の西表島を選んだ。それまで暮らしていた都会の生活とは大きく異なる、豊かな自然が広がる環境に惹かれたからだ。実際に、台風が来ると物資の到着が遅れるといった離島ならではの自然の強さを体感しながらも、充実した3ヶ月間を過ごした。
その後も、「新しい土地へ行きたい」という純粋な想いから、その時々の目的や趣味に合わせて日本各地の職場を渡り歩いた。冬は趣味であるスノーボードを満喫するために長野県のスキー場へ。春は静岡県・西伊豆へ。そして、次なる大きな夢であった「地球一周の船旅」へと参加することになる。
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「リゾートバイトで生活費を抑えながら集中して資金を貯めたことで、念願だった地球一周の船旅に参加することができました。3ヶ月間で23カ国もの国々を旅したのですが、世界中の多様な文化や人々と触れ合えたことは、自分の視野を大きく広げてくれる本当に貴重な経験になりました。その後、船旅で出会った友人を訪ねる形で熊本県へ行き、帰国後の冬には再び長野県のスキー場へと戻って夏まで継続して働きました」
そうして日本各地や世界を巡るなかで、國井さんはリゾートバイトという期間をこう振り返る。
「私にとってリゾートバイトの期間は、『自分自身を知るための期間』でした。様々な職種を経験したことで、仕事の向き不向きによる大変さや楽しさを、身をもって知ることができました。やっぱり、実際に働いてみないとわからないですし、知らない自分に出会えるいい時間だったと思います」
各地を巡った先で出会った、心から喜びを感じられる職場
長野県での勤務を終えた國井さんは、栃木県のベーカリー・レストランの「ペニーレイン」でリゾートバイトをすることになる。年齢的な節目もあり、「そろそろ落ち着いて定職に就きたい」と考えていたタイミングで、施設側から直接雇用の打診を受けたことが、大きな転機となった。
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「一番の理由は、ここで働くことが楽しかったからです。両親も知っているくらい有名で、地元の福島からも近い距離にあるというご縁もありました。何より、この施設が持っている世界観が、かつて私が憧れて働いたディズニーの環境にどこか重なって、とても魅力的に感じたんです。この大好きな世界観の一部になって、スタッフとしてお客様に喜びを提供できることが、直接雇用を選ぶ大きな決め手になりました」
さまざまな職場で経験を積み重ね、自らの目で見て、心から本当に喜びを感じる場所を選んだ國井さん。彼にとってこの決断は、単なる定職への復帰ではなく、その先にある大きな夢へのステップでもあった。
「自分の普通」から一歩外へ。動き出すことで見えてくる新しい人生
高校を卒業したときは特にやりたいこともなく、兄弟と同じように工場で働くことが自分の「普通」だと思っていた。しかし、20歳でのディズニーの経験をきっかけに一歩を踏み出し、リゾートバイトや地球一周を経て、現在は新しい道を歩んでいる。現在の職場で経験を積んだ先には、「いつか自分もカフェを経営したい」というビジョンも見据えている。
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かつての自分と同じように、今の環境を変えるかどうか迷っている人に対して、國井さんはこう語る。
「『これが自分の普通なんだ』と思い込んでいる人はたくさんいると思います。中心にある自分の世界だけを見ていると気づけないですが、もし少しでも『やってみたい』と思うことがあるなら、勇気を出して一度外の世界へ飛び出してみてほしいです。実際に動いてみないと仕事の向き不向きも分かりませんし、新しい自分に出会うこともできません」
「10年勤めた場所を離れるのは勇気がいりましたが、あのとき踏み出さなければ、地球一周に行くことも、今の仕事に出会うことも、カフェを経営したいという夢を持つこともありませんでした。まずは動いてみることで、自分の人生はいくらでも切り開いていけるはずです」
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地球一周への足がかりとして始めたリゾートバイトだった。
しかしそれは、「自分自身を知るための期間」となり、國井さんを新しいキャリアと、カフェ経営という次の夢へと導いている。





































