35歳で踏み出した一歩|諦めたパティシエの道、リゾートバイトから直雇用で再挑戦

沖縄県にあるラグジュアリーホテルで、一人の女性がパティシエとして新たな一歩を踏み出している。
宮城県出身の佐久間さん(仮名・39歳)は、現在このホテルで直接雇用(正社員)として働いている。
かつて地元で一度は挫折し、諦めかけた製菓の道。佐久間さんはなぜ、リゾートバイトという手段を選び、30代後半にして理想のキャリアを歩み始めたのか。
35歳を目前に抱いた違和感「外の世界を知らないままでいいのか」
リゾートバイトを始めるまで、佐久間さんの生活のすべては地元・宮城にあった。 「30代になるまで、県外で暮らしたことがほとんどありませんでした。地元は何でも揃っていて不自由はなかったのですが、ふとした時に『もっと色々な経験をしたい、今出るしかない』と強く思うようになったんです」
好奇心と、このままではいられないという焦燥感。1年ほど葛藤した末、彼女を突き動かしたのは「他の地域の違いや面白さを知りたい」という純粋なワクワク感だった。
専門職での挫折「好き」だけでは続けられなかった過去
実は佐久間さんは、パティシエとして働いていた経験がある。
しかし、そのキャリアは決して順風満帆ではなかった。
「専門職としてのやりがいはありましたが、人間関係や、質よりも利益を優先する経営方針とのギャップに疲れてしまい、一度その道を挫折しているんです」
その後、飲食店やコールセンターなど様々な仕事を経験したが、心の中にはいつも小さな「物足りなさ」があった。一度消えかけたはずのパティシエとしての情熱がくすぶっていた。

北海道、神奈川を経て沖縄へ
思い切って飛び出したリゾートバイトの世界。佐久間さんが選んだ場所は、どれも刺激的な土地ばかりだった。
最初は、地元から遠く離れた北海道。
全国から集まるリゾートバイトでの出会いは、彼女の狭まっていた視野を一気に広げてくれた。
次に選んだのは神奈川県の小田原。都会に近い環境で、北海道とはまた違う文化に触れた。
そして3箇所目に選んだのが、今の目的地である沖縄だった。
「沖縄には以前から『一度は住んでみたい』と強く惹かれるものがありました。実際に暮らしてみると、豊かな自然やゆったりとした文化が驚くほど自分にフィットして。あぁ、ここならずっといられる、と確信したんです」
「派遣だから」と妥協しなかった、正社員へのステップアップ
佐久間さんの挑戦が印象的なのは、リゾートバイトを単なる「思い出作り」で終わらせなかった点だ。
彼女は沖縄へ行く前から、現在の職場での正社員登用を明確な目標として掲げていた。
「年齢的なことも考え、リゾートバイトをステップにして、1年、長くても3年以内には腰を据えて働こうと自分の中で計画を立てていました」
現場では「派遣スタッフだから」という壁を自ら取り払い、プロとしての責任感を持って周囲とのコミュニケーションを徹底。
それと同時に、自分は「ここで働きたい」という熱意を、ダイブの担当営業にも伝え続けた。
現場での実績と、営業担当を通じた一貫した意思表示。その真摯な積み重ねが実を結び、ついに希望していたホテルでの直接雇用という切符を勝ち取ったのだ。
挫折した道へ、もう一度
現在は、早朝からパンを焼き、ビュッフェの補充やアフタヌーンティー用のケーキの仕上げに推敲を重ねる日々を送っている。
「午前中に業務が凝縮されていて、毎日があっという間です」と笑う佐久間さん。
その言葉からは、忙しさの中にも確かな充実感を持って仕事に向き合っていることが伝わってくる。

「正社員登用の面接でも『将来はシェフパティシエになるのが目標』と伝えました。今はプライベートでも島唐辛子やシークヮーサーなど、沖縄独自の食材を研究して、新しいスイーツのアイデアを練るのが楽しいです」
一度離れた道だが、佐久間さんはパティシエとしてのキャリアを改めて一から積み上げはじめている。
「人生はリセットではなく、再スタート」
これからリゾートバイトを考えている人へのメッセージを求めると、彼女は力強くこう答えてくれた。
「挑戦してみて100%良かったです。新しい土地でゼロから始めることは、人生をリセットするのではなく『再スタート』させる清々しさがあります。もし迷っているなら、一歩踏み出してみてほしいです」
人生はいつからだって、自分次第で新しく始めることができる。沖縄の食材を手に、これからの夢を語る佐久間さんの姿は、一歩踏み出すことに慎重になっている人の背中を、優しく押してくれる気がした。





































