「3年で終わらせない」地域おこし協力隊へ。本別町が出口戦略を重視する理由

北海道・十勝エリアの東北部に位置する本別町(ほんべつちょう)。人口約5,800人のこの町では、地域おこし協力隊の制度そのものを見直す新たな取り組みが始まっています。
これまで地域おこし協力隊は、「地域活性化」や「移住促進」の手段として全国で活用されてきました。
一方で、本別町ではある課題感を抱えていました。それは、協力隊の制度がその後に定住につながっていないこと。
ほかの自治体と比べても定着率がかなり低いという現実を前に、本別町は地域おこし協力隊の3年間だけではなく、その先の暮らしや働き方まで見据えた制度づくりへと舵を切りました。
地域に残り、地域の人とつながりながら、自分らしい仕事や暮らしをつくっていく。そんな新しい地域おこし協力隊の形を、本別町は模索しています。
今回は、本別町役場の村上さんに、本別町の魅力や地域課題、そして新たな地域おこし協力隊制度に込めた想いについて伺いました。
「まだまだ伸びしろがある町」本別町ってどんな場所?

本別町はどんなまちですか?
本別町は北海道・十勝エリアの東北部にある、人口約5,800人の町です。農業が盛んな地域で、特に「豆のまち」と言われるほど豆類の生産などが有名です。
正直なところ、今の本別町には「これぞ本別」と誰もが思い浮かべるような圧倒的な観光資源はありません。北海道らしい雄大な山や海があるわけでもありません。でも、だからこそ、これから町の魅力を一つひとつ磨き上げ、みんなで「本別らしさ」をつくっていける町だと思っています。
だから僕は、本別町には大きな伸びしろがあると感じています。最近では40〜50代を中心に、「自分たちで町を盛り上げよう」という機運が高まり、肉のブランドづくりやホテル運営、飲食事業など、新しい挑戦が次々と生まれています。行政だけではなく、町民自身が主体となって未来をつくろうとしているのが、本別町の大きな魅力です。
完成された町ではなく、町民みんなで魅力を磨き上げながら、「本別らしさ」をつくっていく。そんな可能性にあふれた町だと思っています。
移住者の方は、本別町のどんなところに魅力を感じていますか?

よく言われるのは、「チャレンジしやすい」「人があたたかい」という部分ですね。困っていたら自然と声をかけてくれたり、「手伝うよ」って背中を押してくれたり。人との距離感が近い町だと思います。
「あの人こういうこと始めるらしいよ」って話が自然と広がったり、「あの人紹介するよ」って人づてにつながったり。そういう人とのつながりが暮らしの中にかなり入り込んでいるので、人との関わりを楽しめる人にはすごく合っていると思います。
ただ、僕は「人があたたかい」だけでは片付けたくないなとも思っていて。この本別町の魅力をどうやって見せていくか、今まさに取り組んでいるところです。
ただその一方で、正直、人との関わりが苦手な人には大変な部分もあると思っています。ある程度、人との距離感を受け入れる必要はあるかなと。
あと、都市部から移住してくる場合、収入面でギャップを感じる方もいると思います。手取りだけで見ると、どうしても下がってしまうケースも少なくありません。
だからこそ本別町では、「キラキラした移住」だけじゃなく、リアルな部分もちゃんと伝えたいと思っています。大変なことももちろんありますが、その中に価値を感じてもらえる人に来てほしいなと思っています。
「3年間で終わらせない」ために。本別町が制度を見直した理由

本別町が今抱えている課題は?
ほとんどすべてが課題と言ってもいいくらいですが…
人口減少はもちろん大きな課題ですが、同様に危機感を持っているのは、地域の中にある取り組みや人材をつなぎ、新しい動きを生み出していく存在が不足していることです。
また、若い世代にとって「この町でどう働き、どう暮らしていくのか」というイメージが持ちづらいことも課題です。都市部で働くことが当たり前になっているなかで、地域の事業者や仕事に触れる機会が少なく、本別町で生きていく選択肢が見えにくくなっていると感じています。
そうした状況のなかで、地域との接点を増やし、将来的な定住につなげていく仕組みづくりが必要だと考えています。
本別町では、地域おこし協力隊についてどんな課題を感じていましたか?

本別町では、これまで15名ほどの地域おこし協力隊を受け入れてきましたが、任期終了後に定住したのは2名だけ。隣町の定住率が7割と聞いたとき、「15人受け入れて定住が2人ではさすがにまずい」と感じたんです。
もちろん、地域おこし協力隊として活動していただくこと自体に大きな意味はあります。ただ、制度の目的を考えたときに、「地域に住む人を増やす」という視点も必要だと感じていました。そのため、本別町では「3年間活動して終わり」ではなく、その後も地域に残り、暮らし続けてもらうためにはどうしたらいいのかを考えるようになりました。
また、これまでは自治体職員が活動内容の設計から実際の対応まですべてを行なうことが多かったのですが、それだけでは限界を感じるようになったことも、制度を見直すきっかけになっています。
そもそも「地域おこし協力隊=起業」みたいな空気感にも違和感があって。もちろん起業も選択肢のひとつではありますが、本別町にはすでに地域を支えている事業者さんたちがたくさんいます。農業も、宿泊業も、飲食業も、商業も、小さい町だからこそ、みんな地域を支える存在なんです。それならば、その人たちと一緒に地域をつくっていくほうがいいんじゃないかと思ったんです。
今、本別町が大切にしている「出口戦略」とは?

本別町で特に重視しているのが、「出口戦略」です。つまり、地域おこし協力隊として活動して終わりではなく、その後も地域に残って、仕事や暮らしにつなげていくことですね。
まだ十分な仕組みができているとは言えませんが、そのきっかけとして地域おこし協力隊制度を活用していきたいと思っています。
だから、活動内容だけじゃなく、「任期後にどう働くのか」「どう地域に馴染んでいくのか」という部分まで含めて考えています。
地域おこし協力隊は、地域のなかで人間関係を作っていくことがすごく大事だと思うんです。仕事だけじゃなく、「この町に知り合いがいる」「相談できる人がいる」という状態を作れることが大きいと思っています。
地域企業で働きながら、地域とつながる。本別町の新しい地域おこし協力隊制度

本別町では、どんな地域おこし協力隊制度を始めたのでしょうか?
2026年度から、本別町では「民間活用型」の地域おこし協力隊制度をスタートしました。農業、商業、宿泊業、製造業、医療など、町内13の事業者さんと連携して、実際に地域企業で働きながら地域振興にも関わっていく制度です。
これは単純な人手不足対策ではないので、事業者さん側にも、「一時的なお手伝い要員ではないですよ」ということはかなり丁寧に伝えています。
地域企業で働くことで、自然と地域との接点が増えていくんですよね。「今度イベントあるから来なよ」とか、「商工会紹介するよ」とか。そういう関係性って、役場だけにいるとなかなか作れない部分もあると思っていて。
だから、「協力隊っぽい活動」を無理やり作る必要はないと思っています。地域のなかで働いて、人と関わって、その延長線上で地域とのつながりができていく。そういう形が自然で、かつ強力なんじゃないかなと思っています。
応募者と事業者は、どのようにマッチングしていくのでしょうか?
今回の制度では、応募者本人が「将来どういう働き方をしたいのか」という部分もかなり重視しています。その人のやりたいことや将来像を聞きながら、事業者さんとのマッチングを進めていきたいと思っています。
これまでは役場だけで判断する部分も多かったのですが、今後は事業者さんにも実際に会ってもらって、「この人と一緒に働けそうか」というところも含めて見ていきたいと思っています。
「地域に入ってから考える」だけじゃなく、「地域でどう暮らしていくか」まで見据えた制度にしていきたいですね。
「まずやってみる」を大切に。本別町のインターン制度

本別町では、学生向けインターンにも力を入れているそうですね
主に大学生に向けて「お試し地域おこし協力隊インターン」も実施しています。このインターンでは、用意されたプログラムを体験するだけではなく、「まず自分でやってみる」という経験を大切にしています。
例えば「あんこが好きだから」という理由で本別町に来た学生が、地域の事業者と協力しながらイベントを企画したこともありました。最終的には道の駅で販売会をやったのですが、1時間くらいで完売したんです。
また別の学生は、「地域の居場所づくりをしたい」と、自分でイベントを企画していました。コーヒーやお菓子、アパレル販売、ライブ演奏なども組み合わせて、2日間で80名くらい来場しました。
大人と本気で関わりながら、自分で考えて、実践してみる。その経験ってすごく大きいと思うんですよね。
「地域の人たちと関わりながら、自分でも何か挑戦してみたい」。そんな人には、すごく面白い環境なんじゃないかなと思っています。
本別町での暮らしについて、インターン生の感想はどうでしたか?

累計20名くらいのうち9割ほどが大学生なんですが、「来てみたら案外住みやすい」「そんな田舎なんて言わないで!」とみんな言っていました。
市街地はスーパーにもコンビニにも歩いて行けて、ドラッグストアも飲食店も夜まで営業しています。病院もクリニックもあるので、意外と生活するハードルは高くないんです。
本別町の地域おこし協力隊に向いている人とは?
本別町には、どんな人が合っていると思いますか?
明るくて、素直な人ですね。情報発信を楽しめたり、人とのコミュニケーションを前向きに取れたりする人は、本別町と相性がいいと思います。
逆に、「一人で静かに暮らしたい」「人とあまり関わりたくない」というタイプだと、ちょっと大変かもしれません。
でもその分、本別町って僕も含めて「おせっかいな人」も多いんですよ(笑)「野菜持っていきなよ」とか、「今度一緒にこれやろうよ」とか。そういう距離感を楽しめる人には、すごく合っている町だと思います。
「3年で終わり」ではなく、その先の人生につながる場所へ

最後に、応募を迷っている方へメッセージをお願いします。
本別町って、まだまだこれからの町だと思っています。完成された制度があるわけでもないですし、正直、まだ手探りな部分もあります。
でもだからこそ、一緒に考えながら、新しいことに挑戦していける余白があると思うんです。
本別町では地域おこし協力隊の3年間だけじゃなく、その後の暮らしや働き方まで本気で考えています。地域おこし協力隊を、「移住のゴール」ではなく、「定住へのスタート」として考えているので。
もし、「地域で何かをやってみたい」「人とのつながりの中で暮らしてみたい」と思っている方がいたら、ぜひ一度、本別町に来てもらえたら嬉しいです。
「3年間の活動」ではなく、「その先の定住」まで見据えて制度づくりを進める本別町。
地域企業や地域の人とのつながりの中で、自分らしい働き方や暮らし方を見つけていく。
地域で暮らし、働き、人とのつながりを育みながら、自分らしい未来を描きたい人にとって、本別町は新しい挑戦の場になるかもしれません。
本別町地域おこし協力隊募集概要
【募集隊員/人数】 | 民間活用型地域おこし協力隊員 若干名 |
【任用期間】 | 任用は、採用日から採用年度末まで(任用月日は採用者の都合を配慮します) ※活動実績等により、3年を超えない範囲で会計年度ごとに任用 |
【報酬等】 | 月額報酬 254,516円から(活動分野によって異なります。詳しくは、募集要項をご確認ください) 期末手当、通勤手当、住宅手当、赴任に要する経費等を町の規定により支給 |
【申込期間】 | 随時受け付けます ※随時選考を行い、採用者が決定次第、募集を締め切ります。応募資格、応募方法など詳細は下記の募集要項等をご確認ください |





































