30代のキャリアブレイク|20代営業マンの疲弊から北海道へ。10カ所のリゾートバイトを経て「好きなこと」で起業・移住を果たすまで

従来の「若者の思い出作り」や「一時的なつなぎ」というリゾートバイトのイメージは、今や変わりつつある。人生の転換期に一度立ち止まり、自らの生き方やキャリアを再構築するための「キャリアブレイク」として活用する大人が増えているのだ。
東京で不動産の営業職として働いていた大竹さんも、その一人だ。25歳で仕事を離れ、北海道でのリゾートバイトに飛び込んだ。その後、全国約10カ所の観光地で住み込みで働き、現地で出会った女性と結婚。現在は、北海道に移住し、夫婦でスノーボードスクールを運営している。
リゾートバイトを始めたきっかけから移住を決めた理由、現在の事業に込めた思いまでを聞いた。
「何か起きるかも!」と上京した東京での疲弊と違和感
兵庫県出身の大竹さんは、大学受験につまずいたことをきっかけに、「東京に行けば何かが起きるんじゃないか」という淡い夢を抱いて上京した。
卒業後に就いたのは、不動産の営業職。強い志望動機があったわけではないが、もともと接客が好きだったこともあり、友人からの紹介で始めた仕事だった。生活のためと割り切り、営業の仕事に励む日々。
しかし、心の中では常にどこか冷めた違和感を拭えずにいた。
「人はたくさんいるのに、互いに無関心。そんな都会の空気を窮屈に感じていました。生活するために不動産営業の仕事を頑張ってはいましたが、心の中では『何か楽しくなることはないかな』とずっと模索していました」
人生を変えるための移動。初めてのリゾートバイトと巡回生活
「とにかく今の場所から離れたい」「自分の人生を少し変えてみたい」。 その思いひとつで仕事を辞めることを決意した大竹さんだが、当時はまだ今ほど知られていなかったリゾートバイト。
北海道で働きながらスノーボードができる仕事を探していたんですが、当時はとにかく今の場所から移動したかったので、住み込みで働くことへの不安や抵抗感はまったくなかったですね。『何でもやるぞ』というポジティブな気持ちでした」
正社員の仕事を辞めて、リゾートバイトへ行くことに対して両親はあまりいい顔をしなかった。それでも自分が挑戦したいことを伝えて送り出してもらったという。向かった先は、北海道のルスツやニセコといった世界的に知られるスノーリゾートだった。
初めて足を踏み入れた北海道での生活は、衝撃的な楽しさだったという。 大好きなスノーボードを毎日滑ることができ、寮費や水道光熱費を抑えられるため1シーズンでまとまった資金が手に入った。
身軽になった大竹さんは、冬は北海道で滑り込み、夏は沖縄や和歌山(白浜)といった全国各地の観光地を巡る生活へ。そうして働くうちに、ワーホリ(オーストラリア)やバックパッカー旅に行くためのまとまった資金も蓄えていった。
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「どこでも生きていける力」と、地元に溶け込む暮らしの醍醐味
通算10カ所近くのリゾートバイトを経験する中で、大竹さんが手に入れた最大の成果は「どんな環境でも順応できる柔軟性」と「自分をコントロールする力」だった。
「見知らぬ土地へ一人で飛び込む以上、自分からコミュニケーションを取らないと置いていかれて窮屈になってしまいます。だからこそ、挨拶を徹底したり、仕事も率先して取り組んだりして信頼を得ることを大切にしていました」
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また、調理場での勤務や清掃業務などを通じて、料理や掃除、布団敷きといった身の回りのことを手際よくこなすスキルも身についたという。
さらに、地元住民との深いつながりもリゾートバイトならではの体験だった。 数日の観光滞在とは異なり、その土地で「暮らし」ながらお気に入りの飲食店に通うことで、店主や地元の人々と自然と打ち解けることができた。隠れた名所や美味しい食べ物を教えてもらったり、休日に一緒に海へ遊びに行ったりと、その土地の文化へ深く潜り込む楽しさを実感したという。
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30歳での挑戦。趣味のスノーボードを仕事にする決意
全国を巡りながら季節ごとに働くスタイルを続けていた大竹さんだが、30歳という節目の年齢を迎えたとき、自らのキャリアについて真剣に向き合うことになる。
「それまでは趣味として自分が滑ることを楽しんでいたのですが、インストラクターとして人に教える面白さに目覚めました。『自分が本当にやっていきたいことは何か』を考えたとき、やっぱりスノーボードを自分の仕事として形にしたいと思ったんです」
そこから5〜6年にわたり、北海道のスキー場などでインストラクターとしての実績と経験を積んでいった。
現場で働く中で、大竹さんは日本のスノーリゾートが抱える課題にも気づく。 訪日客が急増する一方で日本人インストラクターの数が不足しており、海外から来た観光客に対して海外の事業者がサービスを提供する光景が広がっていた。
「日本の素晴らしい雪山や土地があるのに、日本の若い世代が活躍できる場所が整っていないのはもったいないし、寂しいと感じました。英語が話せて、接客が好きで、能力や熱量のある20代の若者が輝ける場所を作りたい。そう考えて、独立して自分のスクール事業を立ち上げることを決めました」
組織の枠組みにとらわれず、日本のウィンタースポーツ界に新しい選択肢を作るため、大竹さんは大きな挑戦へと踏み出した。
リゾートバイト先での出会いと、北海道への移住
現在、大竹さんは北海道に完全移住し、スクール事業をご夫婦で経営している。 実は、一緒に事業を支える奥さまとの出会いも、リゾートバイトの勤務地だった北海道のルスツリゾートだった。
当時、大竹さんはインストラクター、奥さまはホテルのフロントスタッフとして働いていた。 お互いに顔を合わせる中で一緒に滑りに行くようになり、自然と距離が縮まっていったという。
「妻も28歳の時に東京の企業から脱サラして、3年ほどリゾートバイトを経験していました。もともとスノーボードが好きだったり、境遇が似ていたこともあって、すごく感覚が合ったんです」移動に慣れていて『北海道が好き』という思いも共通していたので、移住を決める際も一切迷いはありませんでした」
お互いの価値観を理解し合える最高のパートナーを得て、大竹さんは今、北海道の豊かな自然のなかで充実した日々を送っている。
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「無理やり環境を変える」ことで得たもの
最後に、働き方や生き方に悩み、リゾートバイトやキャリアブレイクを検討している人に向けて、大竹さんは自身の体験に基づいたメッセージを語ってくれた。
「無理やりにでも環境を変えて飛び込んでみるのが一番です。居場所を変えると、時間の使い方や決断力、コミュニケーション能力を嫌でも問われます。自分で決めなければ前に進めないし、周りと話さなければ窮屈になる。そうやって強制的に環境へ適応していく中で、自分の長所も短所も浮き彫りになり、結果として『どこでも生きていける順応力』が身につきました」
新しい現場へ行くたびに、仕事を一から覚える。人の話を素直に聞き、分からないことは教わり、着実にこなしていく。時には年下のスタッフから教わることもあるが、そのたびに立場をわきまえ、素直な自分を取り戻す。この「初心に戻る回数の多さ」こそが、リゾートバイトで得られた大きな収穫だったという。
最後に、移住やキャリアブレイクに踏み出せずにいる人へ、行き先の選び方についてのアドバイスを聞いた。
「『出会いが欲しいなら同世代が集まる現場』『疲れてのんびりしたいならWi-Fiや生活環境が整った場所』『とにかく稼ぎたいなら高時給の職場』というように、まずは『今の自分がどうしたいか』という気持ちを一番の軸にして探すのがおすすめです。都会のノイズから離れて『本当に必要なものだけあればいい』と思えるようになれば、地方での暮らしはすごく心地よいものになりますよ。迷っているなら、まずは一歩を踏み出してみてください。」
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